襲名制の誘惑は続く
今のAKBを一人も知らないという人でも前田敦子や大島優子や篠田麻里子は知っている。
現役メンバーの名前を覚えてもらうには大変な手間と金がかかるが、「2代目前田敦子襲名のお知らせ」をプレスリリースで流すのは簡単だし、手頃なネタに困ってるメディアが喜んで取材に来てくれそうだし、とっくの昔に他界していったファンも聞きつけて「久々に現場へ行ってみるか」と思いそうだし…といった甘い皮算用を誘発するのが襲名制である。なにしろ発案者はあの河森正治である。魅力的に決まっている。
「そんなのうまく行くかよ」と思われるだろうが、うまく行ってない時にはうまく行きそうな話に耐性がなくなるもので、実際、ちょっと前まで、運営の方針は襲名制導入にかなり傾いていたのではないか。少なくとも「襲名前提で研究生を取れ」派の意見を無視できないくらいにはなり、「そんなのありえない」派との間で議論が決着しないために、新人採用の方針を決定できなかった。結果17期オーディションは遅れに遅れたのだ。
何を隠そう私は妄想を語っているわけだが、語っているうちにだんだん本当のことのような気がしてきた。思い出すのは大抜擢された途端にやめてしまった何人かの若手メンバーのことです。あれ、2代目大島優子とか2代目前田敦子を襲名させられそうになって逃げ出したんじゃなかろうか?歌番組でいきなりフラゲのセンターってあからさますぎる…。
もちろん襲名制はぜんぜんサステナブルでない。おそらく、過去の遺産を食いつぶすだけで、かえってAKBの衰退につながるのである。そうは言っても、苦しい時にすがりたくなるよさげな話ではあるし、少なくとも話題性は期待はできるから厄介なのである。俺が事業部長で、CDの売れ行きがジリ貧で、なんとかしろって上に激詰めされたら「襲名制しかありません」と進言したくなるだろう。気持ちはわかる。
だから正気を保って、今のAKBでちゃんと売れようとしているメンバーと運営に拍手を送りたいのだ。たとえば勝手に広報部長をつとめている山根涼羽は立派である。
本日 … 「 うたコン」で
— 山根 涼羽 (@48Suzuha_16LOVE) 2022年10月18日
♩ #恋するフォーチュンクッキー
♩ #久しぶりのリップグロス を
披露したAKB48メンバーです 🌼
気になるメンバーはいましたか?
ぜひ 、 AKBを好きになってください … !#うたコン #AKB48 pic.twitter.com/YWQcb98gOa
そういえば柏木さんもこんな動画を出していた。
(柏木由紀が切実にならざるを得ないほど、襲名制の導入が現実味を帯びていたのか?)
運営もがんばって17期採用にこぎつけたし、次は18期のオーディションもある。
とはいえ、襲名制導入派は、まだ息の根を止められたわけではない。コンサートのスクリーンにメンバー名を表示する程度のことが徹底されないのは、襲名制導入派のサボタージュと考えれば納得できる。パンデミックが落ち着いたら、情勢はどちらに有利に傾くのか。暗闘は続く。